LARDINIに携わるスタッフの服との歩みをたどり、その審美眼を通してブランドの魅力をひも解く「LARDINI STAFF JOURNAL」。前編では、亀谷がLARDINIと出会い、その可能性に惹かれてブランドへ身を投じるまでを紹介しました。第二回となる後編では、視点を現在へ。26年秋冬の色使い、亀谷自身のスタイリング、青山店の空間を通して、LARDINIが今見せるコンテンポラリーな一面に迫ります。
LARDINI JAPAN COO
亀谷 恵介
大手セレクトショップで販売員、バイヤーを歴任。販売員時代にLARDINIと出会い、バイヤーとして長年取り扱った経験を経て、LARDINI JAPANの立ち上げに参画。現在はCOOとして国内の運営全般を担っている。

一口に“ブラウン”では終わらない、
2026年秋冬を彩る色の奥行き
青山店に並ぶ2026年秋冬のジャケットやコートには、濃淡や赤みの異なるブラウンが使われています。そのなかで亀谷が今季の軸のひとつに挙げるのが、深みのあるチョコレートブラウンです。
「今季の軸のひとつは、チョコレートのようにこってりと深いブラウンです。さらに、イタリア語でナスを意味する“メランザーナ”という、少し赤みを帯びた色もあります。大きく捉えればどちらもブラウンですが、濃さや赤みは少しずつ異なる。ひとつのブラウンを平面的に使うのではなく、いくつものニュアンスを重ねながら、コレクション全体の世界観をつくっているんです」
こうした細かな色づくりは、白やベージュなどのベーシックカラーにも共通しているといいます。
「LARDINIは、派手な色を多用するブランドではありません。ただ、同じ白でも毎シーズン微妙にニュアンスが違いますし、ベージュにも黄色みのあるものや、グレージュに近いものがある。そのシーズンの色を決めたら、ジャケットやコートだけでなく、ニットも糸の段階から同じ基準でそろえます。全身で一貫した色の流れをつくれる。それがLARDINIの色使いの特徴です」
ブラウンは、ともすれば着る人によっては渋さが強く出ることもある色。一方、今季の赤みを含んだブラウンは、その点でも取り入れやすいと亀谷は話します。
「今回のブラウンは赤みがあるので、顔映りがよく、地味になりすぎません。ブラウンでありながら、きちんと“色を着ている”感覚を楽しめるんです。キャメルやネイビーなど、秋冬らしい深みのある色とも合わせやすい。これまでブラウンを敬遠していた方にも、ぜひ試していただきたいですね」

色の引き算で、ジャケットを主役に据える着こなし
取材当日の亀谷が着ていたのは、ブラウンを含んだ大柄のグレンチェックジャケット。インナーからパンツ、靴までは黒で統一し、全身を2色に絞っています。
「現在のLARDINIでは、コーディネートを基本的に2色、あるいは同系色のグラデーションでまとめる提案が増えています。色を多く使って華美に見せるのではなく、色数を絞って全身をクリーンに組み立てる。この日はジャケットの柄を引き立たせるため、インナーからパンツ、靴まですべて黒で統一しました」
主役となるジャケットは、大柄のチェックだけでなく、構築的な仕立てや独特の襟型にも特徴があります。そこには、LARDINIが近年打ち出すコンテンポラリーな一面が表れているといいます。
「LARDINIというと、コンサバティブなイタリアンクロージングを思い浮かべる方もいるかもしれません。でも、実はコンテンポラリーなクリエイションも得意で、近年はその側面がより明確になっています。このジャケットは、肩パッドをしっかり入れた構築的な作りです。上衿は小さく、下衿となるラペルには丸みがあり、少しショールカラーを思わせる形になっています。ゴージ位置は低く、Vゾーンは深め。着丈も長く取られています」
ジャケットに合わせたパンツは、股上を深く取り、裾幅23cmのストレートシルエット。ジャケットとともに、ゆったりとした量感を持たせています。
「ジャケットもパンツも、1980年代のスタイルをベースにしています。パンツは細く絞らず、ゆったりとストンと落ちる形。ジャケットもウエストを強く絞らず、全体にボリュームがあります。ジャケットを主役にしながら、柄だけでなく、上下のプロポーションまで含めて装いを楽しむ。この日は、そんな着方を意識しました」

服と空間を通して、
新しいLARDINIを発信する青山店
亀谷の着こなしに表れていたモダンな感覚は、LARDINI青山店の空間にも通じています。2024年3月にオープンした同店は、従来のショップとは異なる新しいリテールコンセプトのもとで作られたと亀谷は話します。
「実はイタリア本社にとって、青山に店を構えることは長年の悲願でした。青山店がオープンしたのは、ブランドカラーをネイビーから白と黒へ切り替え、よりインターナショナルなブランドを目指し始めた時期でもあります。そのため、従来のLARDINIショップとは異なる、モダンでミニマルな世界観を発信する場所として青山店を作りました。中央を貫く光の柱や幾何学的な照明など、服だけではなく、空間全体でコンテンポラリーなLARDINIを表現しています」

現在はモノトーンを基調としたシャープな空間ですが、今後はブランドの方向性に合わせ、店内の一部を明るくクリーンな印象へとアップデートする予定も。
「今後は、アイボリーやホワイト、ライトグレーを取り入れ、より明るくクリーンな空間へ一部を変えていく予定です。服と同じように、エレガンスとリラックス感のある店内にすることで、今のLARDINIが考えるコンテンポラリーを、よりわかりやすく伝えられると思います。これからの変化も含めて、ぜひ青山店で楽しんでいただきたいですね」
前編で語られたLARDINIの“クリーンさ”は、2026年秋冬の繊細な色使いにも、亀谷の着こなしにも、青山店の空間にも通じています。色の奥行きや、服が描くナチュラルなラインを、実際に店頭で手に取り、袖を通して確かめてみてください。
TEXT Shinji Hashimoto
PHOTOGRAPHY Takashi Ando