LARDINIに携わるスタッフの服との歩みをたどり、その審美眼を通してブランドの魅力をひも解く「LARDINI STAFF JOURNAL」。第1回に登場するのは、LARDINI JAPAN COOの亀谷恵介です。販売員、バイヤーとして数多くの服を見てきた亀谷に、LARDINIとの出会いや、今改めて感じる魅力について語ってもらいました。
LARDINI JAPAN COO
亀谷 恵介
大手セレクトショップで販売員、バイヤーを歴任。販売員時代にLARDINIと出会い、バイヤーとして長年取り扱った経験を経て、LARDINI JAPANの立ち上げに参画。現在はCOOとして国内の運営全般を担っている。

店頭での出会いから、LARDINIに未来を託すまで
販売員からバイヤーへとキャリアを重ね、数多くの服を見てきた亀谷。服に向き合うときの基本は、今も“まずは着てみること”だといいます。
「自分がいいと思った服は、まず着てみます。それから、その姿が周囲にどう映るのかも大切にしています。服は自分自身で楽しむものでありますが、同時にコミュニケーションツールにもなる。TPOを踏まえながら、そのなかでどう楽しみ、どれだけ遊べるかを考えてきました」
亀谷のキャリアの出発点は、バーニーズ ニューヨーク銀座店。当時、ネクタイ売り場からスーツ売り場へ異動した2011年頃、日本に参入して間もないLARDINIと出会いました。
「当時は、軽いアンコン仕立てや製品染めのジャケットが盛り上がっていた時代です。LARDINIの製品染めジャケットも、店頭に並ぶとあっという間に売れていきました。最初の印象は“こなれている”でした。ただ、単に洗いざらしたような服ではなかった。製品染めは、洗い方によって縫い目やラペルに出るアタリが変わりますが、LARDINIは染めているのに、とてもクリーンだったんです。“なぜこんなにきれいなのだろう”と思ったことを覚えています」
その後、バイヤーとなった亀谷は、ブランドの可能性を見極める立場になります。展示会を訪れるたびに広がっていくコレクションや、日本からの要望にも柔軟に応える姿勢に、一過性では終わらない成長性を感じていたといいます。
「毎シーズン、アイテムが増えて品揃えが充実していきました。日本からの別注や生地のリクエストにも応えてくれる。一緒にブランドを作っていけるメーカーだという手応えがあったんです」
LARDINI JAPANの立ち上げに際して声をかけられたとき、多彩なブランドを扱うバイヤーから、ひとつのブランドに深く携わることへの迷いもあったそうです。
「単一ブランドで勝負できるのかは、自分にも問いかけました。それでも、LARDINIの成長性はずっと見てきましたし、日本から働きかけられる余地もある。これまでの経験も生かせる。“このブランドなら勝負できる”と思いました」

頑張らなくても、きちんと見える。
今こそ響くLARDINIの“ちょうどよさ”
日本に参入した頃からLARDINIを見続けてきた亀谷が、変わらない魅力として挙げるのが“クリーンさ”です。製品染めや柄を取り入れても華美には見せず、ノーブルな佇まいに整える。その美意識は、現在のコレクションにも受け継がれています。
「LARDINIは味わいを加えながら、最後はきれいにまとめます。柄を使っても派手になりすぎず、製品染めでも粗野には見えない。こなれているのに上品です。その感覚は昔から変わっていません」
その“クリーンさ”は、仕立てにも表れていると亀谷はいいます。
「ジャケットは、柔らかな袖付けによって肩まわりに自然な丸みを生み出すのが特徴です。ウエストは強く絞り込まず、パンツも極端に細くしない。身体の一部を強調するのではなく、ジャケットとパンツが繋がって、自然に美しいラインが流れるようなシルエットなのです」
こうした控えめな設計は、ひと目で強い印象を与えるものではありません。しかし、実際に袖を通すことで、着やすさとバランスのよさが見えてきます。
「一見すると普通に見えるかもしれません。でも、その形だから日本人の体型にもなじみやすく、無理なく着られる。頑張っているようにも見えないんです。僕自身、昔は細身のパンツを穿くこともありましたが、LARDINIのゆとりに慣れると、こちらのほうが自然に感じられるようになりました。昔は少し頑張って服を着ていたのかもしれません」
コロナ禍を経て、ビジネスシーンの服装は多様になりました。そうした変化を踏まえ、亀谷はLARDINIの仕立てと現在の装いの関係を次のように捉えています。
「今は、仕事できちんとして見せたい一方で、着る本人は無理をしたくない。LARDINIは、その“ちょうどいい真ん中”にある仕立てだと思います。頑張りすぎなくても上品に見える。そのバランスが、今の時代に合っているのでしょう」

「週5」ではなく「週7」へ。
ジャケットを日常の相棒に
青山店を見渡すと、スーツやジャケットに加え、コートやブルゾンなど、休日の装いにも取り入れやすいアイテムが並びます。こうしたコレクションの広がりを、亀谷は“週5ではなく、週7”という言葉で表します。
「平日の仕事だけでなく、休日まで含めて選んでいただける服を充実させています。近年は特に、オフの時間に着るブルゾンなどのアウターウェアに力を入れ、毎シーズン新しいモデルを開発しています。ジャケットやスーツを中心としながらも、“週5”ではなく“週7”でLARDINIを楽しんでいただけるよう、少しずつ提案の幅を広げているところです」
アイテムが多彩になる一方、LARDINIの根幹にあるのは、創業以来受け継がれてきたテーラリングです。初めて手に取るなら、まずはジャケットから。その理由を亀谷はこう語ります。
「ただし、かしこまった場だけで着てほしいという意味ではありません。もっと自由に、日常のなかでジャケットを楽しんでいただきたいんです。シャツやスラックスと合わせればきれいに着られますし、Tシャツやデニムなら、リラックスした装いにもなじみます」
仕事の日だけでなく、休日にも自然と手が伸びる。LARDINIのジャケットは、日常の相棒として長く付き合える一着です。後編では、亀谷の着こなしや2026年秋冬を彩る色使いから、今のLARDINIをひも解きます。
TEXT Shinji Hashimoto
PHOTOGRAPHY Takashi Ando